水野裕子対談集

話の内容

 

館長
倉知 克行
愛知県出身。学業修了後、金融業界で働き始める。2年間の独学だけでピアニストとなった同級生と再会し、自身もピアノを習うことに。ピアノの面白さに惹かれていくと共に、オーストリアの「ベーゼンドルファー」のピアノに魅せられて購入。最適な設置・演奏環境を保つために音楽ホール「深音の館」を建設し、現在はピアニストとして活動する傍ら、館長としてホール・音楽教室の運営に携わっている。

 

世界最高峰のピアノと共に
音楽に触れるための一歩を後押し

 

世界最高峰のピアノメーカー「ベーゼンドルファー」のピアノを擁する音楽ホール・深音の館。倉知館長のホール設立に至るまでの歩みは、まさに“劇的”と呼べる出来事の連続だった。音楽に魅せられた館長に、タレントの水野裕子さんがお話を伺う。

 

鍵盤に触れた25歳
水野 倉知館長はピアニストとして活動し、ホールの運営もされているそうですね。ピアノとの出合いというのは?


倉知 きっかけは、ピアニストとして活躍する友人の存在でした。学生時代は楽器に全く触れていなかった彼が、卒業後に独学でピアノを学び、たったの2年でプロになったのです。実際に彼の演奏を聴いたとき、2年でこれだけ弾けるようになるのかと衝撃を受けまして─。ただ、そう思ったと同時に、自分にもできるのではないかと思ったんです(笑)。そこで、彼に頼んでピアノを習い始めました。それが25歳のときですね。


水野 では、25歳で未経験から始められたのですか!?ピアニストは、幼い頃からピアノを習い、音大などを出た方がなるものだと思っていました・・・。


倉知 私も昔は同じように思っていましたが、実際、私や友人のような経歴のピアニストも稀にいるんですよ。ただ、私の場合は音楽自体にほとんど触れてこなかったものですから、楽譜すら読めなかったくらいです(笑)。


水野 それが、なぜここまでのめり込むようになったのでしょう。


倉知 何度か弾いているうちに、家でも練習したいと思い始め、電子ピアノを買ったんです。すると、1ヶ月ほどで1曲弾けるようになり、それならもう1曲やってみよう・・・と、いつの間にか夢中になっていきました。


水野 まずやってみたところ、どんどんはまっていったと・・・。


倉知 そうですね。楽器が弾けない方は、「できない」のではなく「やらない」という方がほとんど。しかし、楽器に最初から触れることなく諦めてしまうのはもったいないと思うんです。「楽器なんてできるわけがない」と思っている方も一度挑戦してみれば、音楽の世界が新しく開けるかもしれませんよ。


水野 倉知館長に言われると非常に説得力があります。音楽を始めるのに、年齢は関係ないということなのでしょうね。

 


魅せられた楽器とともに
水野 ところで、こちらのホールには世界的に有名なピアノがあるそうですね。


倉知 ええ、スタインウェイと並ぶピアノ界の2大メーカー、「ベーゼンドルファー」のピアノです。ピアノが上達するにつれて電子楽器に限界を感じていたところ、知り合いが紹介してくれました。当時、私はその価値を理解できていたわけではなかったのですが、入手困難だと聞いていたのに1週間後に見つかったと連絡が入ったので、せっかくなら一度弾いてみようと試奏会場を訪ねたんです。


水野 実際に演奏されてみて、いかがでしたか?


倉知 打鍵した瞬間に、これまで演奏してきたピアノとは全てが違うと感じました。ベーゼンドルファーのピアノには、心で奏でる音楽をそのまま実音にしてくれる繊細な反応があったのです。「名器は人を選ぶ」と言いますが、自分の実力がありのまま出てしまう─そんなピアノに触れたのは初めてでした。それで、購入することに決めたのです。


水野 ピアノと出合われてから名器を手にするまでトントン拍子に話が進み、何だか運命的なものを感じますね。そしてのちに、音楽ホールの設立に至ると。


倉知 ベーゼンドルファーとの出合いがなければ、ホールを建てることもなかったと思います。ある意味で、「ピアノの家を建てた」というわけです。

 


 ホールは、設計士の方と試行錯誤を重ねて創り上げましたから、音響効果に優れ、クラシック音楽以外のジャンルにも幅広く対応できますよ。またコンサートのほかにも、ベーゼンドルファーのピアノを使った人前結婚式などの各種イベントも行っています。
水野 それと、音楽教室も設けていると伺っています。


倉知 はい。ピアノ、ヴァイオリン、フルートの各教室があり、ピアノ教室では、アップライトピアノでありながら打鍵のタッチがグランドピアノと変わらない、グランフィールピアノを使用しています。生徒の年齢層も幅広く、幼稚園児から70歳まで様々な方が通っていますよ。
音楽を中心とした街へ


水野 では、今後の展開についてはどのように考えていらっしゃいますか?


倉知 個人的には演奏活動の時間を増やし、近いうちに自身で作曲を手がけたオリジナルCDを発売しようと考えています。そしてホールとしては、この場所を拠点に活動する室内オーケストラを立ち上げたいですね。こうした夢を実現するためにも、まずは音楽教室の生徒を増やし、「深音の館」の存在を地域の方に認知して頂くのが当面の目標です。


水野 こちらをきっかけに、地域がより活気付いていくといいですね。


倉知 そうですね。音楽というのは、数ある芸術の中でも「音」として五感に直に伝わるものですから、人々に与える影響も強いと思うのです。だからこそ、音を追求し続け、とにかく“楽しい”音楽を皆に届けることで、音楽が身近にある街づくりの一端を担えたら幸いです。

 

 

 

Focus on the topic
“本当の音”に触れられる
極上の時間を提供
オーストリア製の「ベーゼンドルファー」のピアノは、スタインウェイと並ぶピアノ界の2大名器の1つ。柔らかいタッチや音の深みに加え、奏者の中に流れている音を自由自在に表現できるのが特長だ。このベーゼンドルファーのピアノを擁した「深音の館」には、「“本当の音”に触れて音楽の楽しさや奥深さを堪能することで、人の心を動かす音楽を奏でてもらいたい」という倉知館長の思いが詰まっている

 

 

水野 裕子(タレント)

倉知館長のように、大人になってからピアノを始めて弾けるようになる人は決して多くないと思います。ただ館長曰く、「ピアノを弾けると思いますか?」と聞かれて「弾ける」と答える人は弾けるはずなのだそうです。つまり、弾けるようになる可能性を開花させる条件は、自分を信じてあげること。ピアノに限らずあらゆる物事に通じるお話に、深く感銘を受けました。

 

 

 出典(クレジット):COMPANYTANK 2015年4月号(国際情報マネジメント有限会社 発行)